イラン〜アフガニスタン国境付近を中心に遊牧生活を営んでいた、バルーチ族による絨毯です。前所有者様によると100年程前に織られたアンティークとの事です。縦約137㎝、横約96㎝です。ミフラーブ模様という上方が階段状に尖った形をしており、メッカの方向に向けて祈祷する際に用いる物です。祈祷用絨毯は織り手の気迫を感じるような美しい物が多いのですが、こちらも下絵なしの即興で織られたとは信じ難い程バランス良く整った柄です。上下の端の紋織りも非常に凝っています。 左右の端は二色のウールでかがられています。パイルはシルクのようにサラサラ柔らかな手触りです。赤系は初期の合成染料由来のようで色褪せが目立ちます。ピンク〜薄い褐色に褪色し独特な雰囲気になっています。裏側は織られた当時の色合いを残していますが、色褪せのある表にも趣きがあるかと思います。インディゴのパイルは色も長さも比較的良く保たれていますが、褐色には磨り減りが目立ちます。媒染剤に鉄を使用するため経年変化に弱く磨耗しやすいからです。写真一枚目は日干しした際に撮影しました。太陽光の元ではより深みのある色合いにみえます。以下、難点を強調させて頂きます。最大の難点は指先ほどの穴で、私の入手時点からありました。洗濯する際に広がらないように簡単にかがっています。上下端のフサの長さは不揃いで、フサ留めされておらず解れが目立ちます。左右の端は一部で擦り切れています。パイル部分は柔らかくこなていますが紋織はやや固く、織り組成が異なる部分で歪みやすいため、境目で縮んだかのように波打っています。かなりの使用感のあるラグです。本来の祈祷用という用途も考えると、ヘビーに踏み付ける場所で使用する事はお勧めしません。壁掛けなど飾りとしての使用をお勧めします。購入時はかなり汚れていましたので、ウール用洗剤で洗濯しました。個人的な感覚ではありますが、現状は頬ずり出来るくらい綺麗です。我が家では壁に掛けて数週間鑑賞したのみです。オールド キリムから始まり、トライバル ラグ・部族系絨毯と呼ばれる毛織物にはまり、オランダ在住のディーラー様から譲り受けたものです。収納整理のための出品です。長い年月を経てきたなりの難がありますが、作成し使用してきた人々や歳月に思いを馳せつつ、現状のまま愛でて下さる方の購入をお待ちしております。